君に染まる(前編)
「ったく…分かったよ。
すぐ近くにカフェがあるみてぇだし…
しばらくそこで休憩するか」
ベンチの側に設置されている
園内の地図を確認した先輩は、
あたしの手を握り歩きだした。
カフェに入り、
レジで注文した飲み物を受け取って、
店の奥のソファータイプの席についた。
席につくなり口にしたジュースは、
悪かった気分を落ち着かせてくれる。
「お前体力ねぇのな」
あたしの向かいの席に座った先輩が、
コーヒーの入ったコップを触りながら
ほおづえをついてくすくすと笑う。
「確かに体力は無いですけど、
そういう問題じゃないと思います…」
いくら体力がある人だって
ああいう乗り物が苦手な人は
すぐにまいっちゃうと思うし…。
っていうか、あんなに乗りまくって
平気な顔してる先輩がどうかしてる。
ジュースを飲みながら
ちらっと見た先輩は、
さっきまであたしに向けていた視線を
窓の外にうつしていた。
あれだけ乗って顔色ひとつ変わってない…
やっぱりどうかしてる。
そう確信し、ジュースに視線を落とした。
そのままストローで氷をつついていると、
「おい、詰めろ」
横から聞こえてきた声。
顔を向けると、
さっきまで向かいの席に座っていた先輩が
あたしの座っている席の側に立っていた。