君に染まる(前編)
「よっ!」
それがあの人だと認識するのにそう時間はかからなかった。
「獅堂先輩?」
「お、俺の名前調べたんだ」
にっこにこな笑顔で私の顔を覗き込んでくる。
近い…。
「じゃ、じゃあ俺、先に会議室行ってるから」
「え?ちょっと待っ…」
引き止める私の声を無視して野田くんは走って行ってしまった。
「何、委員長なの?」
抜け出そうと抵抗する私の手から先輩は委員会のファイルを奪った。
「ちょっと、やめてください!」
「委員会とかつまんねぇのに、なんで委員長なんかやってんの?」
「別に好きでなったわけじゃ…というかいい加減離してください」
「ああ、お前真面目ちゃんか」
ひ、人の話を聞いていない…。
「離してください!」