君に染まる(前編)
躊躇するあたしに
追い討ちをかけるように、
先輩の低い声がゴンドラ内に響く。
観念して
ゆっくりとネックレスを受け取った。
首の後ろに手を回すだけでは
チェーンを繋ぐことは出来ず、
どうしても
後ろを覗きこまないといけない。
そのせいで、自然と体が密着してしまい、
焦ってうまくつけることが出来ない。
そんな気持ちを誤魔化すように、
あたしは口を開いた。
「あの…さっき、門限の話をしてた時…
どうして怒ってたんですか?」
「え?……ああ、あれか…」
そう言って少し考えこんだ先輩は、
ため息まじりに口を開いた。
「お前が嘘ついたから」
「…嘘?」
「アニキに嘘ついたんだろ?
今日はデートじゃないって」
その言葉に、あたしの手が止まる。
「たかがデートでこそこそしやがって…
腹立つんだよ」
「でも…嘘をつかなかったらあたし…」
「お前のアニキが。
…どんな人かは知らねぇけど、
でも、お前の家族だ」
「え…?」