君に染まる(前編)
「そんな人に俺と会うこと隠すなんて、
そんなの気分いいわけねぇだろ」
…それで、あんなに不機嫌だったの?
あたしがお兄ちゃんに嘘ついたから…?
胸の奥がきゅっとなるのを感じた。
それと同時に、
会ったこともないお兄ちゃんのことを
そんな風に思える先輩に、
なんだか自分が情けなくなった。
「…ご…めんな…さい…」
「別にいい。もう終わったことだし…
つーか、まだつかねぇの?」
そう言うと、
あたしの腰に手を回した先輩。
「せ、先輩!?」
「まーだかぁ?」
必死に身じろぐあたしに
間延びした声をかける。
慌てて手を動かし、
カチッカチッという小さな音の何度目かで
ようやくチェーンが繋がった。
「あ…つきましたよ」
ほっとしながらそう言うと、
その言葉を待っていたかのように
急に強まった先輩の腕。
そのままあたしの顔を覗きこめる体勢に
体を動かすと、
あたしの唇をふさいだ。
次第に激しくなるキスから逃れたくても、
がっちり抱きしめられていて
身動きすらとれない。