君に染まる(前編)
「わ、分かったよ…」
首の後ろにそっと手を伸ばし、
チェーンの繋ぎを外した。
シャラッとキレイな音を立てて
ネックレスがシャツの中から現れる。
それは…
昨日、先輩から貰ったネックレス。
「まったく…
ネックレス1つつける為に
わざわざ担任に電話するなんてね」
「だって…
もし校則違反になって家に連絡されたら
確実にお兄ちゃんにバレちゃうし…」
「はいはい。
良かったね、校則違反じゃなくて」
ネックレスを受け取った楓ちゃんは
軽い口調でそう言うと、
まじまじとネックレスを眺める。
「うわー…きれー…
さっすがお金持ち、すごい高そう」
「え?え?高いの?」
「だってこれダイヤでしょ?」
ダイヤ!?
驚いてネックレスを覗きこんだ。
"S"の文字の尾が丸まっていて、
そこに埋め込まれているものを
楓ちゃんが指差している。
「こ、これってガラスじゃないの?
ただのストーンだと思ってたんだけど…」
「バカ!
財閥の息子が
そんな安っぽいもの買うわけないでしょ?
ダイヤじゃなかったとしても、
ガラスなんて絶対ありえない。
何かの宝石に決まってるって」