君に染まる(前編)
「創吾くん、どこ行くの?」
「帰る」
え?
靴を履きだす先輩に慌てて立ち上がると、
「帰る前に
イニシャルの意味教えて欲しいなー」
優先輩があたしの手の中から
ネックレスを取り上げ、
宙で揺らした。
それを見た獅堂先輩が
靴を履いたまま優先輩に歩み寄り、
荒々しくネックレスを奪い取る。
「お前には関係ねぇだろ」
「何?ムキになっちゃって。
なんかすごい意味でもあるの?」
「黙れ」
ちゃかす優先輩に一喝すると、
視線をあたしに移して腕を掴んだ。
「帰るぞ」
「え。あたしもですか?」
「当たり前だろ。
なんの為に呼び出したと思ってんだ」
確かに、呼び出されたけど…。
首をかしげながら靴を履く。
「ばいばい、未央ちゃん」
手を振る美紅先輩に頭を下げ、
腕を引っ張る獅堂先輩に連れられて
部屋を出た。