君に染まる(前編)


先輩に引っ張られて歩くあたしに
周りからの視線が集まる。



すごい目で睨んでくるのは、
きっと、獅堂先輩のファンの人達。



あまりにも痛い視線を向けるので、
思わず顔を隠すようにうつむいた。



「…気にすんな」



ふいに聞こえてきた声に顔をあげると、
腕を掴んでいた先輩の手が
あたしの手をしっかりと握りなおす。



「ファンの奴らなんかほっとけ。
お前は堂々としてればいい」



自信たっぷりのその言葉と、
握られた手から伝わってくる先輩の想い。



それだけで、
あたしは少し顔をあげることができた。










少し歩いたあたし達は、
Ⅲ類生徒専用の駐車場にやって来た。



ずらーっと並ぶ高級車の中に、
あたし達の姿を見つけた瞬間
深く頭を下げる人が目に入る。



「お疲れ様です、創吾様」



車の側に立っていた
運転手らしきその人は、
そう言って後部座席のドアを開けた。



「乗れ、未央」



「え?」



「いいから」


< 246 / 337 >

この作品をシェア

pagetop