君に染まる(前編)


戸惑うあたしの背中を軽く押す先輩。



言われるがままに車に乗り込んだ。



すごい…中まで高級だ…。



車に詳しくないあたしでさえ、
車内のもの全てが最高級なんだと
肌で感じる。



このシート…すごく気持ちいい…。



感じたことのない肌触りに
思わず感動していると、
突然目の前に先輩の手が伸びてきた。



そのことに反応する間もなく、
その手はあたしの首の裏へ移動し、
先輩があたしに密着する。



「あ、あの…」



「なんですか?」と聞こうとした瞬間、
先輩はすっと離れていき、
同時に胸元に何かを感じた。



「いつもつけてろって言ったろ」



…あ…あたしのネックレス。



「でも、
学校につけてくるとは思わなかった。
お前真面目だからさ、
校則とか気にしそうだし」



「あ…それは、確認したので…」



「は?」



「そ、それより、
送ってもらっていいんですか?
すごく申し訳ないんですけど…」



気づかないうちに走り出していた車から
流れていく景色を眺める。


< 247 / 337 >

この作品をシェア

pagetop