君に染まる(前編)
戸惑うあたしの背中を軽く押す先輩。
言われるがままに車に乗り込んだ。
すごい…中まで高級だ…。
車に詳しくないあたしでさえ、
車内のもの全てが最高級なんだと
肌で感じる。
このシート…すごく気持ちいい…。
感じたことのない肌触りに
思わず感動していると、
突然目の前に先輩の手が伸びてきた。
そのことに反応する間もなく、
その手はあたしの首の裏へ移動し、
先輩があたしに密着する。
「あ、あの…」
「なんですか?」と聞こうとした瞬間、
先輩はすっと離れていき、
同時に胸元に何かを感じた。
「いつもつけてろって言ったろ」
…あ…あたしのネックレス。
「でも、
学校につけてくるとは思わなかった。
お前真面目だからさ、
校則とか気にしそうだし」
「あ…それは、確認したので…」
「は?」
「そ、それより、
送ってもらっていいんですか?
すごく申し訳ないんですけど…」
気づかないうちに走り出していた車から
流れていく景色を眺める。