君に染まる(前編)
「誰が送るっつったよ。
今から俺ん家に行く」
「え?」
獅堂先輩の、家?
しばらくして到着したのは、
想像以上に大きな家…っていうか、豪邸?
大きな門から家の敷地内に入り、
庭と言うにはほど遠い場所を
車で通り抜けると、
建物の前で車は停まった。
ドアを開けてくれる運転手さんに
お礼を言いながら車を降り、
改めて建物を見上げる。
2階立てのわりに
その倍近い高さの建物は、
天井が高いことを教えてくれる。
なんか…改めて知らされた感じ。
獅堂先輩は財閥の御曹司で、
あたしとは住む世界が違うってこと。
そう思いながら少し沈んでいると、
建物の扉が開いた。
「おかえりなさいませ、坊ちゃん」
中から出てきたのは、
キレイな立ち姿で微笑む男の人。
年齢的には"おじさん"なのに、
まったく年を感じさせない姿勢の良さ。
執事さん…かな?
そう思い見つめていると、目が合った。