君に染まる(前編)
ひぃ!こ、怖い…。
「す…すいませんでした!!」
あたしは深く頭を下げると
会議室に向かって全速力で走った。
「あ、おい!!」
後ろから先輩の声が聞こえるけど
振り向かずひたすら走る。
追っかけて来て…ないよね?
走りながら何度か後ろを振り返る。
しまったな…
最近ピアノのレッスンなかったから
爪切るの忘れてたよ。
「最悪だぁ…」
また怒らせちゃった。
これじゃ本当に
VIPルームってやつに連れ込まれちゃう…。
「何か質問はありますか?」
会議室に響く植野先輩の声。
委員長…なって良かった。
自分から立候補なんて出来ないあたし。
押しに弱く、流されやすく、
おまけに見た目からも
そんなオーラが出てるらしい自分の性格を
恨んだこともあったけど…。