君に染まる(前編)


階段をあがり、
ある部屋に入った先輩に続く。



ここ…先輩の部屋?



閉めた扉の前にたたずみ部屋を見渡した。



家を見た時ほどの衝撃は受けず、
思ってたより部屋は狭い。



けれど、
部屋にある物全てが
高級感にあふれている。



大きなソファーに大きなベッド。



必要最低限な物だけが置かれる中、
あたしの目に飛び込んできたのは
キレイなグランドピアノだった。



VIPルームに置かれていたピアノより
高級そう…。



引き寄せられるように
真っ直ぐピアノに向かう。



「弾きてぇのか?」



ピアノに触れるあたしを先輩が覗きこむ。



「…弾きたいです」



「弾きてぇなら好きなだけ弾けよ」



「ホントですか!?」



その言葉に勢いよく聞き返したあたしは、
先輩の返事も待たず
ピアノカバーを掴んだ。



どんな音がするんだろう…。



期待をふくらませながら
カバーをめくろうとした瞬間、


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