君に染まる(前編)
そのままベッドの側にある電話に
手を伸ばす。
「畠山。
何か飲み物持ってきてくれ。
ああ、菓子も頼む」
用件を伝えた先輩は、
再びベッドに腰をおろした。
そして、あたしを優しく引き寄せ、
軽いキスを唇に落とす。
「…先輩?」
枕を抱きしめたまま先輩を見上げる。
「キスまでは拒否させねぇぞ」
そう言うと、再度キスを落とし、
枕を奪ってあたしを抱きしめた。
さっきより優しいキスに安心して
素直に体を預けていると、
シャツの中に手が入ってきた。
背中に回った手はもぞもぞと動き、
重なっていた唇が離れていく。
「あ…」
そのまま首筋に移動した唇にビクビクし、
思わず体を強張らせる。
「抱こうと思えば今すぐ抱けるけど…」
耳元でそう聞こえたかと思うと、
先輩があたしから離れた。
「無理やり抱いてお前が泣いたんじゃ、
いい気分しねぇからな」
フッと笑いあたしの目元を親指で拭うと、
立ち上がってピアノに向かった。
「先輩…」