君に染まる(前編)


今まで先輩が
女の人とどんな付き合いをして、
どんな接し方をしてたかなんて
あたしは知らない。



でも…昨日の先輩の言葉。



あの言葉から、
先輩があたしのことを思って、
大事にしようとしてくれてるのは…
感じとれた気がする。



優先輩との話を終えたあたしは、
螺旋階段をあがって
ベッドルームに入った。



部屋の中央にある大きなベッドには、
気持ちよさそうに寝ている獅堂先輩。



起こしちゃまずいかな…
でも、昼休み終わっちゃうし…。



ためらいながらも
先輩に近寄り軽く体を揺らす。



「先輩?起きてくださ………きゃっ!」



突然腕を引っ張られたあたしは、
ベッドに倒れ込み、
先輩の腕に抱きしめられた。



「せ、先輩?」



「ん………」



ねぼけているのか、
先輩からの返事はない。



けれど、あたしの体を離そうとはせず、
それどころか腕の力は強まる一方。



「せ、先輩、起きてくださいっ」



寝息を立てる先輩に何度か声をかけると、
ぴくっとまぶたが動いた。



「……あ?……未央?」


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