君に染まる(前編)
慌てて手を離すと、
目の前に現れたのは先輩の不機嫌な顔。
「だって、いきなりこんな…
それに、心の準備だってまだ…」
「ちっ…まだかよ…
明日は出来てんのか?」
「明日って…
そんな1日2日で
出来るものじゃないです…」
「はあ?じゃあいつならいーんだよ」
「いつ…って、言われても…」
真っ直ぐな視線から思わず目をそらすと、
先輩は大きなため息をついて
あたしから離れた。
「…もういい」
めんどくさそうにそう言い捨て、
あたしに背を向けて横になった。
「え?あの…」
「昼休み終わるぞ。早く教室戻れ」
イラだち混じりの声に慌てて口を開く。
「ご…ごめんなさい、
あたし怒らせるつもりじゃ…」
「別に怒ってねぇし」
「でも…嫌な思いさせ…」
そう言いかけた時、
先輩はあたしを引き寄せ頬にキスをした。
「……怒ってねぇっつってんだろ」