君に染まる(前編)


優しいキスとはうらはらに、
先輩の表情は険しい。



「早く戻れ」



それだけ口にすると
またあたしに背を向け横になった。



やっぱり………怒ってる…。



そう思ったものの、
これ以上何も言うことは出来ない。



「…失礼します」



先輩の背中に頭を下げ、部屋を出る。



そのまま、閉めたドアにもたれかかった。



あたし…変なのかな…?



先輩のことは好きだし、
先輩なら嫌じゃない。



付き合うってことは、
そういうことをするんだってことも
ちゃんと理解してる。



でも、無理なものは無理…。



付き合ってまだ1週間も経ってないのに
あんなことするなんて…。



…世間は普通なの?



好きなら、時間なんて関係無くするもの?



あたしの考えは、おかしいの…?










「別におかしくなんかないわよ」


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