君に染まる(前編)


アイスコーヒーの氷を
ストローでつつきながら
頬杖をついている美紅先輩。



「そりゃ、こんな時代だし、
付き合ったその日にしちゃう人達だって
いるだろうけどー…
ま、人それぞれだしね。
特に、未央ちゃんみたいなタイプは
抵抗あるだろうし、
初めてならなおさらじゃない?」



「そう…ですかね…」



美紅先輩の言葉に小さくあいづちを打ち、
手元のジュースを意味も無くかき混ぜた。



季節は夏休み真っ只中の8月上旬。



あの日から今日までの約2ヶ月間は
あっという間だった。



あれからすぐ期末のテスト週間に入り、
テストが終われば、
ピアノ教室が8月の頭に開催する
幼児・小学生クラスの
コンサートの手伝いで多忙の毎日。



先輩と一緒に過ごせる時間は
まったく無かった。



それでも、
コンサートが終われば
それなりに暇だったんだけど…。



『今日から海外に行く。
2学期まで帰ってこねぇから』



夏休み初日にかかってきた電話。



急なことで見送りも出来ず、
海外に行く理由さえ聞けなかったあたし。



先輩を拒んで不愉快にさせた上に、
拒んだ"理由"に対する悩みもあり、
更には彼女らしいことも出来ず…。



夏休みが始まってからというもの、
そのことでずーっと悩んでいたあたしは、
コンサートが終わり時間が出来た今日、
楓ちゃんのバイト先であるカフェで
美紅先輩に相談しているのである。


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