君に染まる(前編)


「お待たせしました。
当店オススメのシフォンケーキでーす」



楓ちゃんの明るい声と共に
おいしそうなシフォンケーキが
先輩とあたしの目の前に置かれた。



「わあ、おいしそー♪」



すぐさまケーキに飛びつく美紅先輩。



そんな先輩を横目に
楓ちゃんは空いていた席に座った。



「もうすぐ3週間くらい?
獅堂先輩があっちに行ってから」



「うん、それくらいかな」



「で…結局何しに行ったの?
旅行?短期留学?」



そう聞かれるけど、
何も知らないあたしは
首をかしげるしかない。



同様に首をかしげる楓ちゃんと一緒に
美紅先輩に視線をうつすと、
にっこりと微笑まれた。



「将来の為のお勉強」



「お勉強?」



「あれでも財閥のお坊ちゃんだからね。
将来会社を継ぐ為に
毎年夏休みは海外に住む両親のとこで
いろいろ勉強してるみたい」



「先輩のご両親って
海外に住んでるんですか?」



「そうよ?知らなかった?
ヨーロッパで獅堂財閥の名を広める為に
移住しちゃったの。
幼い創吾を1人残してね」



「え~?獅堂先輩かわいそー…」


< 262 / 337 >

この作品をシェア

pagetop