君に染まる(前編)
「お待たせしました。
当店オススメのシフォンケーキでーす」
楓ちゃんの明るい声と共に
おいしそうなシフォンケーキが
先輩とあたしの目の前に置かれた。
「わあ、おいしそー♪」
すぐさまケーキに飛びつく美紅先輩。
そんな先輩を横目に
楓ちゃんは空いていた席に座った。
「もうすぐ3週間くらい?
獅堂先輩があっちに行ってから」
「うん、それくらいかな」
「で…結局何しに行ったの?
旅行?短期留学?」
そう聞かれるけど、
何も知らないあたしは
首をかしげるしかない。
同様に首をかしげる楓ちゃんと一緒に
美紅先輩に視線をうつすと、
にっこりと微笑まれた。
「将来の為のお勉強」
「お勉強?」
「あれでも財閥のお坊ちゃんだからね。
将来会社を継ぐ為に
毎年夏休みは海外に住む両親のとこで
いろいろ勉強してるみたい」
「先輩のご両親って
海外に住んでるんですか?」
「そうよ?知らなかった?
ヨーロッパで獅堂財閥の名を広める為に
移住しちゃったの。
幼い創吾を1人残してね」
「え~?獅堂先輩かわいそー…」