君に染まる(前編)


「別にかわいそうじゃないわよ。
会って話せるのは
年に1度有るか無いかほどだけど、
今でも毎日電話がかかってくるほど
創吾ラブな両親だからさ。
まあ、そのおかげなのか知らないけど、
見た目はあんなんでも
中身はちゃんとしてるのよね。
愛情の受け取り方が良かったのか、
親への尊敬はすさまじいわ、
跡取りとしての自覚有り有りだわ」



笑いながら説明してくれる先輩に
楓ちゃんは驚きっぱなし。



「なんか意外…
あーいうタイプの人って
親の敷いたレールを歩くことに
ものすごい拒絶反応起こしそうなのに」



「創吾の場合は
親がレールを敷く前に
先回りしちゃったパターン。
強制されてもないのに
少等部の頃から会社の勉強やってたし、
今では夜遅くまで仕事してるみたいだし」



「仕事?」



そう聞くと、美紅先輩はうなずいた。



「まだ跡継いだわけじゃないから
本格的じゃないらしいけどね。
高校卒業してすぐ跡継げるように
今から準備してるんじゃないかな。
その証拠に、いっつも寝てるでしょ?」



あ…。



"やらなきゃいけねぇこと溜まってたから
一気に片付けてた"



もしかして…
あれって仕事のこと?



「まあ、学校で寝るぐらいなら
昼は学校で仕事して、
夜は家で寝ろって感じだけどね」



「でも、獅堂先輩って
かなりの問題児なんですよね?
いくら仕事を熱心にしても
問題ばかり起こしてたら
お家に迷惑かけちゃうんじゃ…」


< 263 / 337 >

この作品をシェア

pagetop