君に染まる(前編)


驚いて顔を向けると、
頭を押さえて顔をしかめる
楓ちゃんの後ろに
男の人が仁王立ちしている。



「楓!サボってないで仕事しろ!!」



「…ったいなあ!
お団子崩れちゃうじゃん、おじき!!」



「お、おじき?」



頭に作ったお団子を気にする楓ちゃんと
男の人の言い合いを見ながら
首をかしげる美紅先輩。



「あの人楓ちゃんの叔父さんなんです。
このお店の店長さんですよ」



そう説明すると、
美紅先輩は目を丸くした。



「じゃあ、
このお店は楓ちゃんの叔父さんのお店?」



「へぇ…」ともらした先輩は、
未だに言い合う2人に視線を戻す。



やっと言い合いが終わると、
楓ちゃんは荒々しい足取りで
店の奥に入っていき、
楓ちゃんの叔父さんはこっちへ来た。



「久しぶりだね未央ちゃん。
それと、楓の学校の先輩…だったかな?
仕事中にお客さんと話し込むような
だらしないバイトですみませんね」



「いえ、お気になさらず。
引き止めてたあたし達も悪いんですから」



美紅先輩が丁寧にそう言うと、
叔父さんは安心したように笑った。



「あ、そうだ未央ちゃん。
久しぶりにピアノ弾かない?」



「え?」


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