君に染まる(前編)
中2の時。
お兄ちゃんと堀河さんが
作曲しているのを見て
好奇心だけで作った曲。
それが今、店内に響きわたる。
数分後。
弾き終わった瞬間、
店内のいたる所から拍手が巻き起こった。
照れ臭く思いながらも
嬉しさで満たされながら席に戻ると、
さっきまで楓ちゃんが座っていた席に
急に移動した美紅先輩が
あたしの肩を何度も叩いてきた。
「ねぇねぇねぇねぇ!!!!
創吾の誕プレだけどさ、
曲作ってあげたら?」
「へ?」
急な提案にぽかんとするあたし。
「創吾ね、ピアノ独奏曲好きなのよ。
だからきっと喜ぶ?」
曲の、プレゼント…。
それだったら、
あたしにしか出来ないことかもしれない。
「…いいですね、それ」
笑顔を浮かべるあたしに
美紅先輩はにやっと笑った。
「もちろん、
曲と一緒に
未央ちゃんもプレゼントするのよ?」