君に染まる(前編)
プレゼント
夏休みも残りわずかとなったある日。
ピアノ教室のレッスン室を借りて
先輩にプレゼントする曲を作っていた。
~♪
うーん…
今のとこは下がった方がキレイかも…。
鍵盤から手を離し
楽譜に音符を書きこんでいく。
「レ、ド…じゃなくて、ミ、ド?」
頭を抱えながら鍵盤を押さえて確認する。
「何してんだ未央?」
「きゃっ!」
急に声をかけられ、慌てて楽譜を隠し、
そっと振り向いた。
「お、お兄ちゃん…」
「なんだなんだ?なんで隠すんだ?
それ作曲か?兄ちゃんにも見せてくれよ」
興味津々に覗きこんでくるお兄ちゃんから
逃げるように遠ざかった。
「な、なんでもない!
ちょっと遊んでただけだから…
それよりお兄ちゃん、どうしたの?
今日は大学に行くって言ってたのに…」
「さっき帰ってきたんだ。
そしたら未央が家にいなくて、
母さんに聞いたらここだって言うから」
「そ、そっか…何か用事?」
「いや?
最近レッスン以外でよくここに来てるから
気になって。
なんでわざわざここで弾いてるんだ?
家にもピアノあるのに」