君に染まる(前編)


あたしを立ち上がらせようとする
畠山さんの手を振り払う。



「このままじゃ帰れないんです!
あたしが悪いから…
あたしが先輩を嫌な気持ちにさせたから…
だから、先輩に会うまでは帰りません!」



上から降ってくる
困り果てたため息を聞いても、
あたしはその場を動こうとはしなかった。










門の近くにしゃがみこんでから、
最初のうちはあたしに帰るよう
声をかけてくれていた畠山さんだけど、
動こうとしないあたしに呆れてか
1時間前から姿を現さなくなっていた。



「…もう1時間半か」



携帯画面の現在時刻を見て思わず呟く。



自分から言い出したこととはいえ、
辺りが暗くなっていくのを感じれば
不安も募っていく。



…どこかで信じてたのかもしれない。



あたしがここにいるって知ったら
必ず先輩は会ってくれる…って…
どこかで先輩に甘えてた。



だけど、未だに会ってくれない。



連絡しても繋がらない。



よっぽど怒ってるんだ…
それとも嫌われた?



いつまでもこんなとこにいるなんて
しつこいって思われたのかも…。



時間が経てば経つほど
そんなことが頭を駆け巡り、
気付いたら頬を涙がつたっていた。


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