君に染まる(前編)
大きな講堂に案内され学科、学年ごとに分けられた席に着席すると入学式が始まった。
学校紹介、来賓の紹介、学校生活の説明に理事長の長い話。
周りの生徒が退屈そうにあくびをしたりひそひそとおしゃべりをしたりする中、私だけは真剣に壇上を見つめていた。
…というよりも、理事長の話が終わるのを今か今かと待っていた。
長い長い理事長の話が終わると司会の先生がマイクを手に持った。
「続きまして、生徒会長のあいさつです」
鼓動が速くなる。
体が熱い。
壇上に現れたその人は新入生に一礼してマイクに顔を近づけた。
「生徒会長の植野純矢です。新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます」
優しい顔、優しい声であいさつをするこの人は、私の憧れの人。
私はこの人を追いかけて、この学校に入学した。