君に染まる(前編)
「ほら、早く乗れ」
「…っやです……あたし帰りません!」
「嫌じゃねえだろ!
このままだとホントに風邪ひくぞ!?」
「それでもいいです!」
そう声を上げると、
あたしの背中を押す先輩の力が弱まった。
「お願いです、
あたしの話を聞いてください」
せめて誤解を解くだけでも…。
「…ったく」
ため息混じりの呟きが聞こえたかと
思うと、
突然抱きかかえられた。
そのまま車に向かう先輩。
「お…降ろしてくださいっ」
必死に抵抗したものの、
あっけなく車に乗せられ、
閉められたドアには
鍵までかけられてしまった。
やだ…帰りたくない!
慌ててドアを開けようとした瞬間。
「引き返せ、畠山」
先輩も車の中に乗りこんできた。
引き返せって…。
言葉の意味を理解する間もなく、
あたし達を乗せた車は
Uターンして建物に向かっていく。