君に染まる(前編)
"Lover"
部屋に入るなり先輩は顔をしかめた。
「ったく…
お前のせいで俺までびしょ濡れだろーが」
「…すいません」
先輩に渡されたタオルを握り締めながら
視線を下げる。
「…そっち、
バスルームだからシャワー浴びてこいよ」
「…え?」
「その間に服乾かしといてやるから
ちゃんと体暖めておけ。
そんでとっとと帰れ」
帰れって…。
「話を聞いてくれるんじゃ
ないんですか?」
「何度も言わせんな。
俺には話すことなんて無いっつたろ」
「先輩に無くてもあたしには有るんです」
「俺はそんなに暇じゃねえ」
きっぱりそう言うと、
あたしの背中を押して
バスルームへとうながす。
「お願いですから聞いてください!」
「聞かねえっつってんだろ」
「聞いてもらえるまで帰りません!」
先輩を見つめ真剣にそう言うと、
先輩はあたしの体から手を離した。