君に染まる(前編)
弾いては書いて、弾いては消して…。
先輩を想いながら作った曲。
眺めているうちに
胸がしめつけられるのを感じた。
あたし…
いつのまに先輩のこと
こんなに好きになってたんだろう…。
嫌われたくなくて必死になって、
拒絶されただけで胸が苦しい。
こんな日がくるなんて…
先輩と初めて会ったあの日には
想像もできなかった。
先輩がバスルームに入って
もうすぐ1時間が経とうとしていた。
先輩、まだ出てこない…。
何度見つめたか分からない
バスルームの扉を見つめてため息をつく。
もしかして…
あたしが帰るの待ってるのかな。
もう遅いし…
いい加減帰った方がいいかも…。
そう思いながら、
どんどん暗くなる窓の外に
視線をうつした。
でも…これだけは渡したい。
手にしていた楽譜の入ったファイルを
ぎゅっと抱きしめる。
そのまま部屋の中を見渡すと、
グランドピアノが視界に入った。