君に染まる(前編)


…あの上に置いておこう。



重い体をなんとか動かし、
かばんを持ってピアノに近づく。



メモを置いておいた方がいいよね?



でも、紙とペンは無いし…
メールでもいいかな?



そう思いながら携帯を開く。



こころなしか…
文字を打つスピードが遅い。



〔今日はわがままなことを言って
すみませんでした。
どうしても話したいことがあります。
時間ができたら連絡ください。
待ってます。


誕生日プレゼントに曲を作りました。
ピアノの上に置いておきます。
早く聞いて欲しいです〕



…これで、いいかな?



何度も確認しながら
送信ボタンに指を動かす。



ピッ



全身を使ってボタンを押した。



なんだか…すごくまぬけ。



ボタン1つ押すだけに
全身の力を使い果たした気分。



一気に脱力してため息をついたその時。



~♪



すぐ近くで携帯が鳴り出した。


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