君に染まる(前編)
驚いて音の方へ顔を向けると、
窓際に開いた状態の携帯が置いてある。
これ…先輩の携帯?
そう考えているのも束の間。
バイブ機能が働いているらしいその携帯は
鳴りながら少しずつ動いてる。
そして、そのまま窓際から遠ざかり、
次の瞬間には大きくバランスを崩した。
「わっ!!」
慌てて側に駆け寄り、
落ちそうになった携帯を
間一髪でキャッチ。
あ、危なかった…。
一気に心拍数が上がったのを感じながら、
窓際よりも安全なピアノの上に
携帯を置こうとした時、
画面に映し出されている
大量の未送信メールが目に入った。
これ…全部あたし宛のメール…?
ためらいながら
画面をスクロールすると、
ボックスの中にある全ての未送信メールが
あたし宛となっていた。
日付は全て今日のもの。
…見てもいいかな?
彼氏とはいえ、
他人の携帯を見るのはかなり後ろめたい。
でも、あたし宛のメールだもん…
たぶん大丈夫…なはず。
そう自分に言い聞かせながら、
思いきって一番新しいメールを開いた。