君に染まる(前編)
〔帰れよ〕
〔ずっとそこにいてきつくねぇの?〕
〔家まで来てもらって悪いけど、
今は会いたくねぇ〕
ここに来てからのメールは
入れって言ったり帰れって言ったり…
冷たかったり優しかったりで
先輩が動揺してるのが分かる。
同じような文も何通かあるし…。
〔お前、俺がいない間浮気してたのか?〕
〔なんでキスなんかしてんだよ〕
〔誰だよ、あの男〕
ここに来るまではこんなのばっかり…。
全ての未送信メールを見たところで
もう1度最初のメールに戻った。
〔お前、俺のどこが好きなわけ?〕
他のメールとの接点の無さや、
先輩らしくない弱気な文に
ますます頭が混乱する。
どうしてこんなこと…。
そう思いながらふと顔をあげた時、
携帯が置かれていた窓際から見える
ある光景に気が付いた。
ここ…あたしがいた門がよく見える…。
はっきりとはいかないものの、
人がいるな、車が止まったな、
ぐらいは確実に分かる。
そんな場所に携帯が開いた状態で
置いてあったってことは…
ここからあたしのことを見てたってこと?