君に染まる(前編)


なんでって…。



「え?」



「あ?」



話が噛み合わずお互いに首をかしげる。



「え、だって…怒ってたんですよね?」



「だからなんで」



「だって、あれから連絡つかなかったし、
家の中にも入れてくれなかったし、
ずっと冷たい態度だったから
てっきり怒ってるのかと…」



顔色をうかがいながらそう言うと、
先輩は困ったように頭をかいた。



「あー…だからそれは…」



そのままうつむいて言葉をつまらせ、
大きなため息をついた。



けど、すぐに顔を上げベッドに座り、



「座れ」



あたしをチラッと見ながら
自分の横をポンポンと叩く。



戸惑いながらも言われた通り座ると、
それを横目で確認した先輩は
言いにくそうに口を開いた。



「…お前…本当に俺のこと好きか?」



「…え?」



「獅堂財閥の御曹司とか、金持ちとか、
そーいうの全部無しでも…好きか?」



そう聞く先輩の目がすごく真剣で
少し肩がすくむ。


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