君に染まる(前編)
…ん?
「じゃあ…どうして怒ってたんですか?」
「だから、今それを話してんだろ?」
呆れたようにため息をつくと、
頭をかきながら顔をしかめた。
「俺が怒ってたのは…その…俺の問題で…
お前は関係無いっつーか有るっつかー…」
「…どっちですか?」
「だから!…だから…
未央は他の女と違うって思ってたのに
俺と約束してる日に他の男とキス…
まあ、実際は違ったけど…
信じてたのにそんな光景見たせいで
裏切られた気分になって…
今まで遊んだ女達の中には
俺の肩書きや金に群がる奴がいたから
もしかしたら未央も
そうなんじゃねぇかって…
そう思い出したら止まらなくなって…
今まで堀河って男に向かってた怒りが
一瞬で未央に向かった」
先輩…。
「そんな状態で未央を目の前にしたら
無理やりヤっちまいそうで…」
「…え?」
「心の準備できたって聞いてすぐだし、
何よりずっと我慢してたから
絶対歯止めきかねぇと思って、
理性保つ為に冷たく当たったり…」
「もしかして、
家に入れてもらえなかったのも…」
「…ああ。それに…」
そう言いかけると、あたしに背を向けた。
「…泣かせたくなかった」