君に染まる(前編)
うつむく先輩。
「お前、前ここに来た時涙目だったし、
つーか、そんなの彼氏として失格だし…
…でも、
悲しませたことには変わりねぇか」
ため息混じりの弱弱しい声。
…こんな先輩初めてだ。
いつも自信満々で、堂々としてて、
周りを巻きこむほどのわがままな人。
それなのに…
あたしのことでこんなに悩んでる。
傷付いてる。
あたしはその背中を見つめながら、
後ろ手にベッドについている先輩の手に
自分の手を重ねた。
ピクッと反応する先輩にかまわず
口を開く。
「…あたし…嫌われたかと思ってました」
「…あ?」
「連絡もつかなくて、
家にも入れてもらえなくて、
入れてもらえても相手にされなくて…
だから、嫌われたのかと…」
あたしの言葉に先輩が振り返る。
うつむいていたあたしは
顔を上げて先輩を見つめた。
「でも…
あたしの勘違いだったみたいですね」
「未央…」
「嫌われたわけじゃないって分かって
安心しました」