君に染まる(前編)


…体も熱いし。



「…優しさが?」



…きっと、顔も赤い。



「優しさが…その…優しさの感じ方が…
他の人と違うというか…」



勇気を出して話し始めたのはいいけれど、
ここにきて何が言いたいのか
分からなくなってしまった。



先輩と見つめ合ってることもあり、
だんだんと頭が混乱してきたその時。



「…ぶはっ」



今まで真剣な顔つきだった先輩が
急に吹きだした。



「せ…先輩?」



「…くくっ…優しさ、ねぇ…」



握り拳を口に当てて
笑いをこらえてる先輩。



「いや…そっか、うん…分かった」



わ、分かった?…何が?



うなずきながら
何かに納得する先輩に首をかしげる。



「…俺がバカだった。
未央があんな女達と一緒なのかも、って、
一瞬でも思った俺が」



そう言った先輩の表情からは
さっきまでの弱弱しさは感じられない。



いつもの獅堂先輩の表情だった。


< 319 / 337 >

この作品をシェア

pagetop