君に染まる(前編)
…体も熱いし。
「…優しさが?」
…きっと、顔も赤い。
「優しさが…その…優しさの感じ方が…
他の人と違うというか…」
勇気を出して話し始めたのはいいけれど、
ここにきて何が言いたいのか
分からなくなってしまった。
先輩と見つめ合ってることもあり、
だんだんと頭が混乱してきたその時。
「…ぶはっ」
今まで真剣な顔つきだった先輩が
急に吹きだした。
「せ…先輩?」
「…くくっ…優しさ、ねぇ…」
握り拳を口に当てて
笑いをこらえてる先輩。
「いや…そっか、うん…分かった」
わ、分かった?…何が?
うなずきながら
何かに納得する先輩に首をかしげる。
「…俺がバカだった。
未央があんな女達と一緒なのかも、って、
一瞬でも思った俺が」
そう言った先輩の表情からは
さっきまでの弱弱しさは感じられない。
いつもの獅堂先輩の表情だった。