君に染まる(前編)
部屋に入ってきたのは芹澤先輩だった。
あの優しそうな先輩。
「じゃあ後でいいや。
どうせ大した用じゃないし」
そう言って、ドアノブに手をかける。
「ま、待ってください!」
あたしの声で芹澤先輩は立ち止まった。
「助けてください!」
「てめっ、何言ってんだっ」
「やだ、離して…」
「あれ?君…」
あたしの顔を見ると
芹澤先輩は目を細めて近づいてくる。
「あ…創吾の舌噛んだ子だ」
思い出したようにあたしを指差した。
「出てけよ優」
「卓ー!美紅ー!」
「バ…何呼んでんだよ!」
「だっておもしろいじゃん」
「おもしろくねぇ!いいから出てけ!」
あたしの体を抑えつけたまま
芹澤先輩を怒鳴り散らす獅堂先輩。