君に染まる(前編)
「それに…
もし未央が俺の肩書きを
好きになってたとしたら、
会長なんてさっさとやめて
俺に乗りかえてたはずだしな」
「会長?………あ」
もしかして…植野先輩のこと?
そんなに昔のことでもないのに
その名前に懐かしさを感じて
頭を巡らせていると、
先輩があたしを軽く引き寄せた。
そのままあたしの頭に手を乗せ、
その上に顔を乗せて話を続ける。
「つーか、俺…
昔の女がどうとかよりも、
ただいじけてただけかもしれねぇ」
「いじけてた…って?」
「俺ばっかり好きなんじゃねぇかって」
「………え?」
思ってもみなかった言葉に
視線を泳がせていると、
小さなため息と共に嫌みたっぷりの声。
「付き合って3ヶ月経つのに
メールや電話は俺からばっかだし、
会いたいとか寂しいなんて
言われたことねぇし、
夏休みのことだって何も聞かれなかった」
「そ、それは…」
「挙句の果てには
俺と約束してる日に
他の男と一緒にいたしなあ?」
ますます嫌みっぽくそう言われ、
「……ごめん…なさい……」