君に染まる(前編)
「…それって普通、聞かなくね?」
「だ、だから!
そう言ったじゃないですか…」
自分で言い出したこととはいえ、
突っ込まれるとやっぱり恥ずかしい…。
「はぁ…そのつもりだけど…
まさか嫌とか言うんじゃねぇだろうな」
「そうじゃなくて…
その前にやりたいことが…」
「やりたいこと?
……ああ、シャワーか。
ったく、だからさっき浴びろって…」
「ち、違います!」
先輩の言葉を慌てて否定したあたしは、
姿勢を正して改めて口を開く。
「…誕生日おめでとうございます」
「は?誕生日?」
「はい」
笑顔で返事をすると、
何かを思い出したように目を細めた先輩。
「もしかして、
どうしても今日がいいって言ってたのは…
俺の誕生日だからか?」
「え?あ……はい」
「…それって、
『私をプレゼント』ってやつ?」
にやっと笑う先輩に
カァーッと顔が熱くなる。
「そ、それは…」