君に染まる(前編)
あながち間違いじゃないせいか
否定が出来ない…。
なんて答えればいいのか迷っていると、
ふいに先輩が呟いた。
「……まじかよ」
そして、次の瞬間には体を引き寄せられ、
唇が重なりそうになる。
…けど、とっさに口元を押さえるあたし。
目の前の先輩は顔をしかめた。
あ…。
「も、もう1つだけ…いいですか?」
先輩が口を開く前に慌ててそう言うと、
先輩はゆっくりあたしから離れた。
「…今度はなんだよ」
ため息混じりの先輩から離れ
立ち上がったあたしは、
ピアノの上に置いていた楽譜を
手に取った。
「これ…プレゼントです」
楽譜の入ったファイルを差し出すと、
先輩は不思議そうにそれを開く。
「……楽譜?」
「はい。あたしが作った曲です」
「あ、作った?」
そう言って目を見開く先輩に
小さくうなずく。
「先輩はお金持ちだから、
あたしの買える物は嬉しくないかなって…
だから、
あたしにしか贈れないプレゼントを」