君に染まる(前編)
「へぇ…」
小さく笑いながらファイルをめくる先輩。
「…これ、題名は?」
「え?あ……」
そういえば考えてなかった…。
「はっ、無名かよ」
くすくすと笑った先輩を前に
必死に頭を回転させる。
「えっと…あの…」
題名…題名……何かない?
言葉を探す中、浮かんできたのは…。
「…ら…Lover」
「Lover?」
…思いつきで言っちゃったけど、
単純すぎた…かな?
楽譜を見つめる先輩の様子をうかがう。
先輩はしばらく楽譜を見つめた後、
「…りょーかい。ありがとな」
そう言って、あたしに笑顔を向けた。
喜んでもらえた様子に
自然と顔がほころぶ。
けど、すぐに気付いた。