君に染まる(前編)


「へぇ…」



小さく笑いながらファイルをめくる先輩。



「…これ、題名は?」



「え?あ……」



そういえば考えてなかった…。



「はっ、無名かよ」



くすくすと笑った先輩を前に
必死に頭を回転させる。



「えっと…あの…」



題名…題名……何かない?



言葉を探す中、浮かんできたのは…。



「…ら…Lover」



「Lover?」



…思いつきで言っちゃったけど、
単純すぎた…かな?



楽譜を見つめる先輩の様子をうかがう。



先輩はしばらく楽譜を見つめた後、



「…りょーかい。ありがとな」



そう言って、あたしに笑顔を向けた。



喜んでもらえた様子に
自然と顔がほころぶ。



けど、すぐに気付いた。


< 325 / 337 >

この作品をシェア

pagetop