君に染まる(前編)


「……あ。ご、ごめんなさい!
楽譜だけ渡しても意味ないですよね。
今弾きますから…」



そう言って、立ち上がろうとした瞬間、



「きゃっ…」



先輩に腕を引っ張られ
そのままベッドに倒れこんだ。



思わずつぶった目をそっと開くと、
目の前には先輩の顔。



一瞬目が合うと、
先輩の顔がゆっくりと近づいてきた。



「………あ」



唇が重なりそうになった瞬間、
思わずもれたあたしの声に
先輩の動きが止まる。



「…まだなんか?」



少しかすれた声にドキッとする。



真剣な先輩の目に見つめられ、
小刻みに顔を振った。



それを合図にお互いの唇が重なる。



だんだん激しくなっていくキスに
少し苦しくなってきた時、
先輩の手が服の中に入ってきた。



その瞬間、無意識に体がこわばる。



や、やっぱり怖い…。



固く目をつぶり、
先輩の服をきゅっと握っていると、



「…おい」


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