君に染まる(前編)
耳元で先輩が呟いた。
「本当にいいんだな?」
「……え?」
「え?じゃねえよ。
そんな泣きそうな顔されるとやりにくい」
「あ…ご、ごめんなさい…」
慌てて先輩の服から手を離す。
「あの…嫌、とかじゃないんです…
でも初めてだから…恐くて…」
「それは分かってる。
でもなあ、そんな緊張されると…」
「だ、大丈夫です!」
「いや、大丈夫じゃねえだろ」
「大丈夫です!
…それに、信じてますから」
「あ?」
「…初めてここに来た時、
先輩言ってくれましたから…
『優しくする』って…」
本当はすごく恐いけど…
でも、先輩を信じてる。
「…優しく………してくれますよね?」
すがるような思いでそう聞くと、
目を丸くして固まってしまった先輩。
そして、一瞬あたしから顔をそらすと、
「……あー…くそっ!」