君に染まる(前編)
「そ、そうじゃなくて…」
俺の冗談に
未央が必死に否定した時、
携帯の鳴る音が部屋中に響いた。
未央の携帯だ。
「あ…」
携帯の音に気付いた未央は
慌てて布団から出ようとするけど、
それを阻止した俺。
鳴り続ける携帯に焦る未央は
腕の中でもがくけど、
やがて携帯が鳴りやむと大人しくなった。
「今の電話…
お兄ちゃんだったらどうしよう…」
「関係ねぇよ」
「関係ありますっ……
どうしよう…お兄ちゃん怒ってるかな…
早く帰らないと…」
そう呟いたかと思うと、
今度は慌てて口を押さえた。
「違うんです!
先輩と一緒にいたくないとかじゃなくて、
ただ、お兄ちゃんが心配すると
後で面倒なことになるから…」
「分かってるって」
笑いをこらえながら未央の頭を撫でた。
「んー…でもなー…」
帰したくない。
でも、そんなこと言ったら
めちゃくちゃ動揺する。