君に染まる(前編)
小さく笑った俺は、
布団を握り締める未央の手に触れた。
「まあ…
今は未央のピアノの方が好きだけど」
「…え?あ…えっと…
じゃ、じゃあ、あれ弾きましょうか?」
どもりながら
視線を誕生日プレゼントの楽譜に向け、
ベッドを降りようとする未央。
「いい」
離れそうになった手を掴み引き寄せ、
ベッドに押し倒した。
「…っ……せ、先輩…」
身動きがとれなくなり
視線を泳がせる未央に近付く。
「後でいい。今はいいから…」
もう1度…未央の声を聞かせて…。