君に染まる(前編)





「植野先輩かっこよかったね?」


入学式が終わり、クラスのHRも終えて下駄箱へ向かう道中で楓ちゃんがにやにやとそんなことを言う。



「ねぇ、今から先輩のとこ行かない?」

「え?や、やだ!」

「なんでよ」

必死に首を振る私に楓ちゃんは不満そう。



「なんの為に植野先輩と同じ高校に入学したのよ。会いたくないの?」

「会いたい…けど、いきなり行ったら迷惑だし」

「なんで未央はそー弱気なのかなー…好きなんでしょ?先輩のこと」

「す!?……き…なのかな?」



憧れてるのは確かだけど…。



「好きじゃないの?」

「分かんない…第一、植野先輩が私なんか好きになるはずないよ…」

「勝負する前から諦めてどうすんの?未央は大人しすぎ。もっとあたしを見習って積極的になりな」

「楓ちゃんは積極的すぎ」

「それぐらいしないと男なんてゲット出来ないの!ただでさえ草食系が増えてんだから女のあたし達が頑張らないと」

「えー…」

「えーじゃない!ん?…あ。ねえ、あれ」

うなだれる私に急に楓ちゃんが後ろの方を指差した。


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