君に染まる(前編)


普段はほとんどメイクをしないせいか
鏡に映る自分の顔に違和感を感じる。



髪も少し巻いたし…
楓ちゃんに選んでもらった
いつもより大人っぽい服。



…“可愛い”って、思ってもらえるかな?



鏡を見つめながら少し口元をゆるめた時、



「よっ」



目の前に現れた人影。



顔を上げたあたしは唖然とした。



「…獅堂先輩!?」



な…なんで?



「なんだお前、気合入ってんな」



そう言いながら
驚くあたしを上から下まで眺める。



「なんでいるんですか!?」



「さあ?」



さあって…
まさか、植野先輩と会うこと知ってて
邪魔しに来たんじゃ…。



「…帰ってください!」



「あ?」



「あたし…すごく楽しみにしてたんです…
だから…」



だから…邪魔されたくない。


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