君に染まる(前編)


唇を触ってる先輩の手を掴んだ。



そのまま先輩の指を
あたしの唇に押さえつけ、
その指を先輩の唇に押さえつける。



「…おい、何やってんだよ」



「キ、キスですっ」



「はあ?ふざけんな!ちゃんとしろ!」



「そんなこと言われても…」



怒鳴ってくる先輩から顔をそらすと、
遠くの方に植野先輩が見えた。



「と、とにかく帰ってください!」



一言そう言って、獅堂先輩の元を離れた。



「植野先輩っ」



辺りをきょろきょろと見渡していた
植野先輩は
あたしの声に反応して振り返った。



「あ、いた。こんにちわ未央ちゃん」



「こんにちわっ」



…あ…私服…。



制服姿しか見たことなかったから
私服姿ってなんか新鮮…。



私服姿もかっこいいな…。



「…可愛いね」



「え?」


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