君に染まる(前編)
「映画始まってねぇのに
いちいち外出るか?」
そう言って
植野先輩の席に足をあげている人。
黒ぶちのだて眼鏡をかけてるけど…
あきらかに獅堂先輩。
驚きすぎて声が出ない。
「な、な、なっ」
「あ?何ぼーっとしてんだよ」
「な、な、なんでっ」
「俺に見とれてんの?」
「なんでいるんですか!?
帰ってくださいって言いましたよね!?」
「映画観るんだよ」
「映画?」
「お前、ちょっと自意識過剰なんじゃね?
つけられてるとでも思ったんだろ」
「だって…」
「ほら、あいつ来たぞ。前向け」
足を下ろした先輩は
あたしの顔を無理やり前に向かせた。
…自意識過剰?
じゃあなんで…お昼も一緒なの?
映画が終わり、
お昼ご飯を食べるために入ったお店に
続けて獅堂先輩も入ってきた。