君に染まる(前編)
「や、大丈夫です」
お兄ちゃんが待ちぶせしてるかも
しれないし…。
「送ってくれてありがとうございました
気をつけて帰ってくださいね」
軽く頭を下げて振り返ろうとした時、
「未央ちゃん」
突然腕を掴まれた。
「あのさ…」
首をかしげるあたしに
植野先輩がゆっくり近づいてくる。
じっと見つめると
そっとあたしの頬に触れた。
え……。
理解出来ない状況に戸惑うあたし。
そんなあたしをよそに
先輩は顔を近づけてくる。
これってもしかして…
いや、もしかしなくても…キス?
心臓の音が半端じゃないあたしは
近づいてくる先輩の顔に合わせて
ゆっくり目を閉じた。
あと少し…あと少し…。
…と、いうところで、
誰かに腕を引っ張られた。
「そこまで」
聞こえてきた獅堂先輩の声。