君に染まる(前編)
…み、見ちゃった。
絶対見ちゃいけないもの…だよね?
っていうか、これじゃ中に入れない…
獅堂先輩に話があるのに…どうしよう…。
部屋の外で困り果てていると
ドアが勢いよく開いた。
出てきたのは女の人で、
「最低」
あたしを見るなり低い声でそう言うと
睨んで階段を降りていった。
「おい」
続けて出てきた獅堂先輩は
開いたままだったドアにもたれて
あたしを見下ろした。
「何しにきた?」
「あの…」
「お詫びしにきたのか?」
「…お詫び?」
そう聞くと舌を出した先輩。
「そうじゃなくて…お願いにきたんです」
「お願い?」
首をかしげる先輩を見つめた。
「…もうこれ以上、
あたしに関わらないでください」