君に染まる(前編)


扉が閉まるのを見届けず、
あたしはその場から離れた。










…知らない。



あんな植野先輩知らない。



あたしの知ってる植野先輩じゃない。



“表では誠実で真面目な生徒会長。
けど、裏では女ったらしの遊び人”



獅堂先輩と初めて会った時に
言われた言葉。



獅堂先輩の言ってることは正しいの?



“あいつはお前の思ってるような
奴じゃねぇ”



…本当にそうなの?



分かんない…分かんないよ…。



「…未央?」



机にうつぶせていたあたしは
楓ちゃんの声で顔をあげた。



「どうかした?ずっとそうやってるけど」



「…あれ…今何時間目?」



「もうお昼」



そう言うと、
あたしの前の席に座って
コンビニの袋を机に置いた。


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