君に染まる(前編)
「昨日?」
「いきなりあんなことしちゃって…
付き合ってるわけでもないのに…」
あんなこと…。
「あ…」
もしかして…キスのこと?
「後で考えてみたら
嫌だったんじゃないかなって思って…」
「そんな、気にしないでください」
「……本当にごめん」
必死に謝る先輩。
さっきの先輩とは全然違う。
やっぱり…何かの間違いだよね。
きっとあたしの見間違い。
うん…きっとそうだよ。
心の中でそう信じて、
「本当に大丈夫ですから…
それにあたし…」
―――嫌じゃありませんでしたから
そう言おうとした瞬間、口をふさがれた。
顔をあげると、
あたしの口をふさいだまま
植野先輩を睨んでる獅堂先輩がいた。
「こいつ借りるぞ」